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インターネットの急速な普及とともに、電子商取引の実験が各地で行われているが、電子マネーの安全性を確保するものとして暗号・認証技術が注目されるようになってきた。暗号方式には送信者と受信者が同じ鍵を用いる共通鍵方式と、暗号化と復号化に異なった鍵を用いる公開鍵方式とがある。

 

表1-10 暗号技術と認証技術

方式

暗号化の方法

復号化の方法

特徴

共通鍵暗号方式

送信者Aと受信者B
の共通の鍵で暗号化

送信者Aと受信者B
の共通の鍵で復号化

2者の組み合わせの数だけ鍵が必要。通信
者の数が増えると鍵の数が膨大となり配送
や保管が困難

公開鍵暗号方式

受信者Bの公開鍵で
送信者Aが暗号化

受信者Bの秘密鍵で
受信者Bが復号化

暗号化する鍵を公開できるので秘密を保持
しなければならない鍵の数が少ない

デジタル署名

送信者Aの秘密鍵で
署名文を暗号化

受信者Bは送信者A
の公開鍵で復号化

署名文は秘密鍵を持つ送信者のみ作成可能
なため通信者本人が作成し、途中の改ざん
がないことの確認もできる

資料出所:『個人認証技術と通信システムヘの応用に関する研究調査報告書』1993.3郵政研究所、『平成8年版通信白書』郵政省、『わが国におけるアクセスコントロールの実態』1994.3(財)日本情報処理開発協会、等から作成

 

OECDでは1995年末から、国際的な暗号管理の方法について、暗号政策の専門家を集めて話し合いを始めた。中心的存在が米国で、「暗号鍵供託システム」(KES)の導入を主張している。「暗号鍵供託システム」とは、使用する暗号を供託センターが管理するもので、国家機関の要求に応じて鍵を開示することができる。国家機関は開示された鍵を用いて犯罪などの通信傍受に用いる。我が国では、電気通信事業法に通信の秘密が掲げられ、国家による通信傍受(盗聴)も合法化されていないが、欧米では暗号の使用に何らかの制限があり、電子商取引の普及や輸入製品に暗号が使用されるようになれば、いつまでも国際的な流れには逆らえない。しかし、開示された暗号を用いれば通信内容は筒抜けとなる。犯罪組織の悪用やバーチャルカンパニーの脱税など、限定された利用方法の研究が求められている。

 

 

 

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